診断書だけでは、会社は判断できない。
職場で健康問題が起きると、
「何の病気なのか。」
「診断書には何と書いてあるのか。」
「主治医は何と言っているのか。」
そんな話から始まることが少なくありません。
もちろん、病気や治療は重要です。
しかし、会社が最初に判断しなければならないことは、
本当にそこなのでしょうか。
会社がまず把握できるのは、
職場で実際に何が起きているのかという事実です。
例えば、
遅刻や欠勤が増えている
締切を守れない
ミスが続いている
通常勤務を継続できない
周囲とのトラブルが増えている
これらは、病名が分からなくても会社が確認できる事実です。
産業保健では、この二つの視点を整理するために、
「疾病性」と「事例性」という考え方があります。
疾病性とは、医学的に何が起きているかという視点です。
一方、事例性とは、職場で実際に何が起きているかという視点です。
重要なのは、どちらか一方を重視することではありません。
両者を混同しないことです。
健康問題が起きると、
「病気だから仕方がない。」
「診断書にそう書いてあるから。」
という考え方に引っ張られ、
会社自身の判断が止まってしまうことがあります。
しかし、会社には会社として判断しなければならないことがあります。
その社員は、現在の仕事を通常どおり遂行できているのか。
業務上、どのような対応が必要なのか。
これらは医学だけでは答えの出ない、会社が向き合うべき問題です。
事例性から考えることは、病気を軽視することではありません。
疾病性は医療として適切に扱い、
事例性は職場として適切に扱う。
その整理ができるようになると、休職・復職対応だけでなく、
メンタルヘルスや勤怠不良、就業上の配慮など、
多くの場面で判断が整理しやすくなります。
健康問題について考えるとき、
「何の病気なのか。」
だけではなく、
「職場で何が起きているのか。」
この視点を持つことが、
会社として適切な判断への第一歩になるのではないでしょうか。

