数字は見ていた。けれど、見えてなかった。
時間外労働の管理では、
月間の残業時間がよく使われます。
もちろん重要な指標です。
しかし産業医として現場を見ていると、
同じ残業時間でも、健康リスクは全く違う
と感じることがあります。
ある企業では、
月間の時間外労働は基準内に収まっていました。
数字だけ見れば、
特に問題はありません。
ところが実態を確認すると、
月の後半2週間に業務が集中し、
深夜対応が連日続いていました。
その結果、
不調者や休職者も発生していました。
例えば同じ45時間の残業でも、
・毎日1〜2時間ずつ発生した45時間
・特定の2週間に集中した45時間
では身体への影響は大きく異なります。
特に問題になるのは睡眠です。
深夜業務が続けば、
睡眠時間は確実に削られます。
睡眠不足は単なる疲労感ではありません。
・判断力や集中力の低下
・ヒューマンエラーの増加
・感情コントロールの低下
・さらにはメンタルヘルス不調や労働災害のリスク上昇にもつながります。
月間の残業時間という数字は同じでも、
「いつ負荷がかかったのか」
「どの程度集中したのか」
「睡眠は確保できていたのか」
によって、
実際の健康リスクは大きく変わります。
だから私は、
「何時間働いたか」だけでなく、
「どのように働いていたか」
を見るようにしています。
数字は重要です。
ただし、
数字だけでは見えないリスクもある。
産業医の仕事は、
その実態を見に行くことでもあると思っています。

